「闇金ウシジマくん」の著者、真鍋昌平さんによる最新作「九条の大罪」の第1話を読んで思った4つの事(ネタバレあり)

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皆さん、「九条の大罪」と言う漫画、ご存知ですか?

「闇金ウシジマくん」の著者、真鍋昌平さんが、新しく連載を始められた漫画です。今度の主人公は、弁護士です。今回は、この「九条の大罪」の第1話を読んだ感想を書いていきたいと思います。ネタバレ有りなので、ネタバレが嫌な方は読まないようにして下さい。あくまで素人である私の私見ですので、著者の真鍋昌平さんの意図と違う点もあるかもしれませんが、ご容赦下さい。

この記事はこんな方にオススメです
  • 「九条の大罪」を一度読んだことがある人
  • 「九条の大罪」と言う漫画が気になっている人
  • 「闇金ウシジマくん」の連載が終わってがっかりしている人
  • 世の中の仕組みの裏側を見るのが好きな人
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目次

交通事故という、誰にでも起こりうる事件が題材

第1話は、交通事故という、誰にでも起こりうる事件が題材になっています。

始まって、いきなり交通事故です。

そして、被害者の父親は・・・、子供は・・・という、あまりに目を背けたくなるような残酷な場面が出てきます。

事件の構図としては、

九条弁護士をつけた加害者 VS 検察

という対立構造で話は進みます。

加害者が本当にやったことが普通に裁判で明らかになれば(検察が勝てば)

刑法の特別法である「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第2条の中の

  • 飲酒をしてたので1号の酩酊運転に当たるとともに
  • スピード出してたので2号の制御困難運転にも当たる

ことになります。さらにプラスして、人を死亡させたことになるので、

危険運転致死罪で1年以上20年以下の有期懲役になる

かと思います。で、実際上の求刑の相場が10年位らしいです

で、初めての執行猶予をつける場合、今回の犯罪の刑が、3年以下の懲役・禁錮か50万円以下の罰金でないといけないので、懲役10年も食らってしまっては執行猶予がつけられないわけです。

他方、今回、九条弁護士が勝ち取ろうとしたのは

同じく「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第5条の

  • 自動車の運転上必要な注意を怠り、
  • よって人を死傷させた

ということで、過失運転致死傷罪で1月以上7年以下の懲役・禁錮か100万円以下の罰金になる

かと思います。これだと、実際の求刑の相場が1年5ヶ月位だそうなので、3年以下となり、初めての執行猶予がつけられる、と言う話になるわけです。

九条弁護士が勝ちとった罪名は?

では、今回、九条弁護士が勝ち取った罪名は何罪なのでしょうか?漫画では実は明らかになっていません

ただ、刑罰と、執行猶予がついたかが書かれているだけです。そして、父親の死亡保険金についても触れられていません。

私は過失運転致罪になったのではないかと考えます。父親は事故で死亡したことになっている、ということです。そして、この点について、後の物語でいろんな伏線となって効いてくるのではないかと考えるようになりました。つまり、九条弁護士は、手札を全部出しきらずに決着をつけた、というわけです。

理由は以下のとおりです。

たしかに、物語の中では、被害者の父親が、「事故時に既に死んでいたのではないか?」ということが語られています。

ですが、そのことが裁判で争われたかは描かれずに裁判は終わり、保険金の話についても父親の死亡保険金についての話は出てきません

ですので、最初に読んだときは、父親の死亡についても裁判で潰したんじゃないかと思いました。つまり、子供の致傷のみについて認められ、過失運転致傷罪になったのではないかと思ったのです。

でも、過失運転致傷だけで禁錮1年6ヶ月は長すぎるのではないか、と言う疑問が湧いてきました。

また、父親の死亡を立証するとなれば、父親の死亡交通事故の保険金が下りなくなる為、裁判では揉めるということも作中で語られています。なのに、裁判はあっさり終わっています。

もしかすると、九条弁護士は、加害者の刑を最小限にすることだけを目指し、それ以上に被害者親子を追い詰めることはしなかったのではないか。つまり、事故によって父親が死亡したということは争わずに、被害者親子が父親の死亡交通事故の保険金も受け取れるように暗に計らったのではないか。そう思うようになりました。

あるいは、裁判が長引くこと自体が加害者である被告人に不利益になるから、あっさり裁判が終わるよう、真実の追求はやめて程よい落とし所で決着をつけた、というふうに考えることもできるかもしれません。

そう思って九条弁護士の表情を見返すとしっくり来る

そう考えてもう一度一コマ一コマ注目してみてみると、九条弁護士の表情の微妙な違い、ニュアンスなどがしっくり来るように感じます。

まず、法定の場面。判決言い渡し後、加害者が少し言葉を発します。その後の九条弁護士の視線。左側にそっと目をやります。その目線の先にいるのが、傍聴席の母親と子供。そうです。被害者は対立当事者ではなく、傍聴人なのです。

母親の激しく憎悪に満ちた顔。前のページの、表情が描かれない裁判官・裁判員や検察官とは対照的です。

また、裁判所から出てくる被害者親子に対しても九条弁護士は視線をやっています。

九条弁護士は、自分の依頼人である加害者だけでなく、被害者をも、そっと気にかけている、という様子が、ささやかながらこの視線で描かれているのではないかと思います。

もし仮に、自分の依頼者のことだけしか気にかけていなければ、もっと違う、勝ち誇ったような表情なりになったであろうと思うのです。でも、九条弁護士はそんな勝ち誇った表情はしていません。どちらかと言うと静かな、何か考えているような表情をしています。

最初読んだときは、九条弁護士は非情なやり方をした、という風に、作中のネット上などで騒がれているとおりの前提で読んだので通り過ぎましたが、こうしてじっくり見直してみると、なるほど、そう考えればしっくり来る、と思えました。

ストーリー中のあまりにも冷静なアドバイスや、最後の方に出てくる、九条弁護士の非情に思える表情や言葉に隠れてしまいがちですが、実は、九条弁護士の人間味よく読めばわかるように散りばめられているのではないかと思いました。

実は裁判員裁判で裁判がされている

最初に読んだときは気付きませんでしたが、実は、判決は裁判官だけが判断したのではなく、裁判員という、一般の人達の中から無作為に選ばれた人たちも加わって審議され、判決が出ています。

作中で裁判官席に座っている人たちの服を見て下さい。真ん中3人は黒い服を着ていますが、その両側にいる人達は黒い服ではありませんよね。よく見ると、色んな服装をしています。そうです。一般市民が裁判に関わるという、裁判員制度がここで描かれているということです。

一般市民の常識を裁判にも反映させる、と言う触れ込みで始められた裁判員制度。

そんな裁判員制度という、一般市民の常識や感覚と言うフィルターをも通って判決が出ているわけです。いわば、裁判官だけでなく、一般市民からも後押しを受けた判決だというわけです。

ですが、被害者の母親は傍聴席で激しい怒りの顔。母親にとっては正義が実現されたとは言えないでしょう。公平さ、正義とは何なのか。どうすれば実現できるのか。

裁判員制度という制度であればより真実に近づけるというのは、虚構かもしれない、という、問題意識も私は感じました。人間の認識が関わる以上当然といえば当然かも知れません。

傍聴席にいる被害者

この事件で一番悔しい思いを持っているのは、被害者の母親ではないか、そう思うでしょう。

ですが、母親は傍聴席にいます。一番怒りをあらわにしているのに、傍聴席にいるしか出来ない、なすすべがない。その様子が印象に残りました。

被害者は当事者ではありません。非情に思えるかもしれませんが、今の刑事訴訟法では、そう言うルールになっています。加害者を訴えるのは、検察官です。

というのも、現代社会では、仇討ちが禁じられるからです。仇討ちが許される社会になったらそれこそ怖いですよね。某銀行員が復讐をするドラマは、現実社会では出来ないけど本当はしたい、と言う欲求をユーモラスに大げさに描いたからこそあれだけヒットしたんだと思います。

当事者同士で復讐し合う世の中は怖い。復讐に名を借りてとか、誤解から無実の人が言われもない私怨で被害を受ける恐れがある。例えば、うっかり足を踏んでしまったからって、仕返しに殺されたんじゃたまったもんじゃないですよね。

だから、国家が私人に代わって、きちんとした手続きに則って犯罪者を訴え、先入観のない立場の人が証拠に基づいて裁く、と言う現代の裁判システムを作ったわけです。

ですが、その反面で、被害者が裁判手続きにおいては当事者ではなく単なる傍聴人になってしまうという弊害も生まれてきました。

そんなことから、「刑事手続における犯罪被害者のための制度」のような、被害者が裁判手続きに関与できる制度も増えてきています。

味方になってくれる専門家の重要性

物語の終わりの方で、弁護士が味方についていればもっと保険金を受け取れたのに、保険会社の言うがままに安い保険金しか受け取れなかったという話が出てきます。

世間は知識のない素人に厳しい。知識のない人からできるだけ多く搾り取り、うまくガードしてくれる専門家が味方についている人にはそれに応じた出方をする。

世間はそういうもんだという、世間の厳しさ、世知辛さを描いています。

自分一人ではあらゆる知識を身につけることは不可能でしょう。せめて頼れる専門家が身近にいればいいと思うのですが、多くの人にとってそうなっていないのが現実です。

専門家に相談したら高く付きそう。そう思ってしまいますよね。そう思わせてしまう、専門家側の閉鎖性というものも実は問題かもなとも思ってしまいます。

専門家側も専門知識を得るために多大な労力とコストを投資したのですし、生活をしていかないといけないから、しょうがないのですが。

まとめ

第1話は、交通事故という、誰もが日常生活で起こりうる事件を題材に、刑事事件に置ける弁護士(弁護人)の役割がテーマになっていました。

そして、業界用語や業界の相場なんかも出てくると同時に、やっぱ一般人にはわからない世界だなーと思った方もおられるのではないでしょうか。

このシリーズを読んでいくうちに、裁判や法律なんかがもっとイメージ豊かに捉えられるようになっていって、いざというときに自分や身近な人達の身を守れることが出来たらなと思います。

「中田敦彦のYouTube大学」をやっておられる中田敦彦さんもおすすめされていましたね。

気になった方は漫画で読んでみてはいかがでしょうか。ちなみに、私はKindleで購入しました。

読んでいただいてありがとうございました。この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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